屠場: ドキュメント (岩波新書 新赤版 565)

著者 :
  • 岩波書店 (1998年6月22日発売)
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本棚登録 : 427
感想 : 46
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屠場、というと、部落差別の問題、同和問題と当然、深い関係がある。そうしたことも含めた労働争議のドキュメント、というつもりで、居住まいを正してページを開いたら、暗く重い印象がとても少ない、仕事に対する誇りを持った職人たちのインタビューが大半を占める内容で、とても新鮮だった。
実際にどんな仕事ぶりだったのか、現在ではどうなのか、どんな技術やチームワークが必要なのか・・・目の当りにしたことはないが、図や写真も交えつつ丁寧に解説してある。そこで働く人たちの技術の腕は、何年も修行してようやく培われる、努力の賜。機械ではできない、人間ならではの力加減が必要な現場で働く人々は、チームワークを大切にする誇り高い職人さんたちだったのだ、ということがよく分かるドキュメントである。
現代の関東では、少なくとも私の周辺では、屠場への差別を見聞きすることはほとんどないが、それは差別がないからなのか、隠されているからなのか・・・?
労働者の意見のひとつに、「『こんな仕事ですよ』と紹介するドキュメント番組でもあれば理解が得られるのに」というものがあったが本当にその通り。理不尽だった歴史も含めて、特別視しないことから始められる時代でありたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ルポ・ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年1月30日
読了日 : 2012年9月23日
本棚登録日 : 2012年9月23日

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コメント 2件

mandolinbumさんのコメント
2013/01/30

この本は読んでませんが、映画ではドイツの「いのちの食べ方」>http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/ 日本の「にくのひと」>http://www.amnesty.or.jp/aff/about/archive_2009/niku.html を見ました。前者は屠場の話だけじゃないけど、DVDで見られるよ。さっちゃんは重たいテーマの本をきちんと読んでいますね。

辻井貴子さんのコメント
2013/02/01

mandolinbumさん いつも諸所にコメントありがとうございます!「いのちの食べ方」、探してみます。世界各国、似たような問題ばかり。人間のやることは古今東西同じだな、とつくづく思います。

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