屠場、というと、部落差別の問題、同和問題と当然、深い関係がある。そうしたことも含めた労働争議のドキュメント、というつもりで、居住まいを正してページを開いたら、暗く重い印象がとても少ない、仕事に対する誇りを持った職人たちのインタビューが大半を占める内容で、とても新鮮だった。
実際にどんな仕事ぶりだったのか、現在ではどうなのか、どんな技術やチームワークが必要なのか・・・目の当りにしたことはないが、図や写真も交えつつ丁寧に解説してある。そこで働く人たちの技術の腕は、何年も修行してようやく培われる、努力の賜。機械ではできない、人間ならではの力加減が必要な現場で働く人々は、チームワークを大切にする誇り高い職人さんたちだったのだ、ということがよく分かるドキュメントである。
現代の関東では、少なくとも私の周辺では、屠場への差別を見聞きすることはほとんどないが、それは差別がないからなのか、隠されているからなのか・・・?
労働者の意見のひとつに、「『こんな仕事ですよ』と紹介するドキュメント番組でもあれば理解が得られるのに」というものがあったが本当にその通り。理不尽だった歴史も含めて、特別視しないことから始められる時代でありたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ルポ・ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2013年1月30日
- 読了日 : 2012年9月23日
- 本棚登録日 : 2012年9月23日
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コメント 2件
mandolinbumさんのコメント
2013/01/30
辻井貴子さんのコメント
2013/02/01