小川プロダクション『三里塚の夏』を観る――映画から読み解く成田闘争 (DVDブック)

  • 太田出版 (2012年5月22日発売)
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本棚登録 : 28
感想 : 4
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三里塚での成田闘争について記した「ぼくの村の話」へのレビューから繋がってお借りした一冊で、DVD付きの豪華版。ページをめくると、小川伸介監督の撮り方や意図、この映画の表現についての解説を交えながら、当時の現地の様子や状況などが記されている。この時代の記録、小川氏が三里塚に至るまでの経緯などが整理され、最後に採録リスト、と続くドキュメンタリー。いきなり映像だけ見るとちょっと分かりにくいが、台詞や各シーンの解説を読みながらだとどんな状況で記録されたものなのかが分かる。
よくこれだけの記録を残したものだ、と思う。

最初は農業を営む人々のシンプルで当然の想い、自分たちの生業と築いてきたものを守りたい、という気持ちから出てきた行動だったのだ。
それが、さまざまな世情や政況、いろいろな思惑によって形ややり方が変貌していく。その過程や経緯の全容がこうしてまとめられてもなお、「じゃあどうすれば良かったのか?」という答えは出ないままだ。

過ちを認めるまでに何十年もかかる「国」や「政府」というシステムは、今も同じことを各地で繰り返し続けている。私欲と利権の争いに明け暮れる“お上”VS民衆、という構図は、今も昔も変わることがないようだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ルポ・ノンフィクション
感想投稿日 : 2012年11月4日
読了日 : 2012年11月1日
本棚登録日 : 2012年11月1日

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