連作短編スパイ小説の第二弾。相も変わらず、スピーディーな展開と予想を超える頭脳戦がもたらすどんでん返しのスリルがたまらなくて一気読み。
ただし、昭和12年に日本陸軍内に設置された諜報機関「D機関」のスパイたちがその卓越した技能を活かして実績を積み上げていく様を描いた第一弾に対し、時代が下った第二弾は、相変わらずD機関の面々が世界各地で暗躍しながらも、軍の異端者で少数精鋭の彼らの健闘虚しく、有益な情報をうまく利用できない日本陸軍上層部の判断がために悲惨な戦争に突き進む日本の迷走は止められずに凋落と破滅へと確実に向かっている様が描かれており、胸が痛い。
そのためなのか、それとも、第一弾の段階から示唆はされていた、全てを偽っているために常に孤独なスパイの末路を描きたかったからなのか、D機関の職員たちが悲しい末路を辿るお話も複数ある。特に「柩」という話は寂寥が胸にこみ上げてたまりませんでした。
個人的には、D機関の創設者である「魔王」結城中佐が若かりし頃に諜報員だった時分、あまりに有能すぎた故に却って祖国日本に裏切られた壮絶な過去が描かれている「蝿の王」がお気に入り。
史実としての第二次世界大戦の結末は当然のことながら知っているのだけど、今後日本と、そして、D機関がどうなるのか、気になってしょうがないので、やはり第三弾に期待。
収録作は、「ダブル・ジョーカー」、「蝿の王」、「仏印作戦」、「柩」、「ブラックバード」の五篇。
私は本作を単行本で読んだのですが、文庫版にのみ収録されている「眠る男」は「柩」とリンクしているみたいなので、またそちらも読まなきゃ、と思いました。
- 感想投稿日 : 2019年8月26日
- 読了日 : 2019年8月26日
- 本棚登録日 : 2019年8月26日
みんなの感想をみる