戦後政治の崩壊: デモクラシーはどこへゆくか (岩波新書 新赤版 893)

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  • 岩波書店 (2004年6月18日発売)
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感想 : 10
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中曽根康弘、宮沢喜一、野中広務、土井たか子の引退によって、戦後政治の終焉が象徴されていると著者は述べています。野中の引退は、利益配分型の政治の破綻を意味しており、憲法第九条をめぐって対極の立場にあった中曽根と土井の引退は、まさに「戦後」という時代をあるいは肯定し、あるいは否定する両極の立場が、なし崩し的に融解してしまったことを示しています。また、宮沢喜一は、みずから戦後の日本の枠組みを形成に参与し、その枠組みの中で復興と経済発展の路線を歩んできた政治家であり、彼の引退もまた、「戦後」という時代が幕を下ろしたことを象徴しています。

本書は、こうした「戦後」の枠組みの崩壊の後に生まれた、小泉純一郎に代表される新たな政治の枠組みについて分析をおこなっています。とりわけ、一部の保守系の政治家のタカ派的な発言が、国際社会、とくにアメリカの実態を捉えていないという批判や、ポピュリズムの問題などが論じられています。

戦後民主主義を擁護するのでもなく、小泉以降の政治に対しても距離を置くという姿勢が見られますが、著者の考えるあるべき政治の形がいまひとつ見えにくいように感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済・社会
感想投稿日 : 2014年3月9日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年3月9日

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