2008年に起こった秋葉原無差別殺傷事件の犯人がたどった軌跡をていねいに追いかけ、彼の幼少期からの家庭環境や職場、友人関係やネット上での振る舞いなどを明らかにしているノンフィクション作品です。
著者の分析の枠組みは、リアルにおける「建前」のアイデンティティとネットにおける「本音」のアイデンティティの対比、あるいは、北田暁大らの仕事によって広く知られるようになった「ネタ」と「ベタ」の境界が消失してしまうという見方がとられており、理論的な著作ではありません。社会評論ではなくノンフィクション作品であり、ややドラマティックな構成になっていますが、全体を通じて興味深く読みました。
この事件などを契機として、社会的包摂の重要性がかまびすしく論じられるようになりましたが、わたくし自身はそうした議論に対してどのような態度をとるべきなのか、まだ明確にできずにいます。ともあれ、本書を読んであらためて問題の所在について学ぶことができたように思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
政治・経済・社会
- 感想投稿日 : 2019年12月15日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年12月15日
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