宗教と霊性 (角川選書 266)

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  • KADOKAWA/角川学芸出版 (1995年10月6日発売)
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「霊性」というテーマを中心に、著者がさまざまな雑誌などに発表したエッセイ、論考、対談などを収録している本です。

本書は4部構成になっており、第1部と第2部は比較的短いエッセイが集められています。とくにオウム真理教事件のインパクトを受けて、この事件を現代日本の宗教が置かれている状況に対する問題提起として受け止めなおそうとする姿勢が示されています。

第3部は中沢新一との対談です。「仏教徒」としてのアイデンティティを中核にしながら自由な思索を展開していく中沢と、「神主」ないし「審神者」としての自覚にもとづきながら日本の宗教観の根底を掘り下げようとする著者の立場の共通点と差異が示されています。「あとがきに代えて」というサブタイトルをもつ本書の終章でも、著者は「宗教学者」の島薗進が中沢や著者たちを体験主義的で身体的な「内在的理解」を求める「宗教学」の立場に立っていると規定していたことに触れつつ、「内在的理解」という単なる方法論的な分類によっては見えてこない、自身と中沢の立場のちがいについて語っています。

第4部は比較的長い論文などを収録しており、とくに鈴木大拙の『日本的霊性』を評価するとともに、大拙が神道における「霊性」を正しく捉えていなかったことが批判されています。著者はこうした見解を他の著作でもしばしば語っていて、わたくし自身は著者の大拙理解には大きな問題が含まれていると考えますが、本書の議論は比較的大拙の叙述をたどるようなしかたで議論が展開されており、著者の見解を知るうえでは有益な内容でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教
感想投稿日 : 2019年12月11日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年12月11日

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