『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)が日本的集団主義の特質をスタティックに記述したのに対して、本書はそのダイナミズムを分析することに焦点が当てられています。
著者は、日本人の「タテ社会」が、ルールに基づいて誰もが入ることのできるような集団ではなく、小集団における「タテ」の関係に基づくパーソナルな関係が積み重なって更生されていることに目を向けます。その上で、全体の頂点に立つリーダーは、その成員の全員に対して命令を下すことのできる権限は持っておらず、むしろ小集団同士の力学を調停する役割が期待されていることや、一部の小集団の動きに引きずられるようにして全体の意思決定が進んでいく独特の運動法則が明らかにされます。
いくつかの興味深いエピソードが語られていますが、どちらかと言えば抽象的なモデルについての議論に終始しており、やや具体性を欠くような印象を持ちますが、集団主義の一つのモデルとして、それなりにおもしろく読めました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2014年2月12日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年2月12日
みんなの感想をみる