日中戦争下の日本 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社 (2007年7月11日発売)
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日中戦争の進みゆきを、日本人はどのように受け止めていたのかということを明らかにしています。

著者はまず、戦争の前線に立たされた兵隊たちが、銃後から贈られてくる慰問袋にどのような思いをいだいていたのかという、ややポスト・コロニアル的な視角からの考察を展開しています。そのうえで、彼らのとらえた中国の実情についての認識と、日中戦争が確たる理念のないままに進展していった現実を対比しつつ、こんにちにまでつづく日中戦争の見方の複雑さのなかに分け入っていきます。

つづいて著者は、当時の日本の政治状況に目を移し、「自由主義」および「国際協調」という立場から、「全体主義」および「地域主義」という立場へと日本の社会システムが転換されていったと論じています。こうした動きが大政翼賛会へとつながり、日中戦争の泥沼化をますます深刻なものにしていった経過がたどられています。

また本書では、火野葦平や山田風太郎、小林秀雄といった作家たちや、矢部貞治や蝋山正道、京都学派の哲学者たちなどの研究者が、それぞれの思想的な立場から日中戦争をどのように見ていたのかという問題にも触れており、多面的な見方を示している点も印象にのこっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・地域・文化
感想投稿日 : 2020年2月25日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年2月25日

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