小沢の退院が決まりますが、事件のために精神障がいに対する人々の警戒心が高まっていたこともあり、彼は自分の居場所がこの社会の中にないということを思い知らされることになります。そして、家を飛び出した彼は、病院の屋上から身を投げて自殺を図ります。斉藤は、彼が最後に発した言葉を早川に伝えることで、2人がお互いの存在を心の支えとして前へ進んでいく可能性に賭けようとします。
伊勢谷や門脇が直面している「社会の目」というテーマは背景に退き、そうした背景のもとで小沢と早川の困難な恋に焦点が絞られているのですが、正直なところ、安易なヒューマニズムに着地することでかえって問題の複雑さが切り捨てられているのではないかという疑問を感じます。もっとも、本作は最初から最後までヒューマニズムの精神に貫かれているのは、読者にとって先刻承知のことですから、私自身が的外れな期待を抱いていたということにすぎないのですが。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
青年コミック
- 感想投稿日 : 2017年7月9日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年7月9日
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