日本近世文学を専門とする著者が、樋口一葉の代表作『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』『わかれ道』を読み解き、とくにそれらのうちに「江戸的なるもの」をさぐりあてている本です。
同時に著者は、前田愛の『樋口一葉の世界』(1993年、平凡社ライブラリー)を高く評価しており、一葉のテクストのうちにジェンダーの問題や「金」というテーマを見いだしていますが、『にごりえ』の解釈では「闇の世界/死の世界」という前田の解釈の枠組みに対して、主人公のお力は「境界を喪失した人間」なのではないかという考えを提出しています。これは、テクスト論的な構造の枠組みを内側から踏み越えるような問題につながる指摘だといえるようにも思うのですが、この点については議論は掘り下げられておらず、ある意味では読者に解釈をゆだねているといってよいのではないかと思います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年9月19日
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- 本棚登録日 : 2019年9月19日
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