怨霊史観に基づいて、聖徳太子、藤原不比等、柿本人麻呂といった歴史上の人物についての大胆な仮説を提示してきた著者が、さらに時代を遡って、日本文化の深層に迫ろうとした本です。
著者は、その日本古代史研究を通じて、津田左右吉の系譜を引く実証主義的な歴史観に対する厳しい批判をおこなってきましたが、本書ではアイヌ学の先駆者であり、日本文化とアイヌ文化の間に鋭い切断線を設けた金田一京助が批判されています。著者は、日本人の精神の深層を形成している縄文文化が、アイヌ文化の中に受け継がれていたと主張し、その研究の必要性を訴えています。
ただし本書は、あくまで著者の縄文・アイヌ文化研究の旗揚げを宣言するにとどまっており、その具体的な成果にはあまり触れられていません。東北地方のフィールド・ワークを通じて著者が得た印象と、宮沢賢治や石川啄木、柳田国男といった、東北の伝統にゆかりのある人物についてのエッセイといった印象です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年12月7日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年12月7日
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