青年と講師の対話形式で、大乗仏教の成立とその思想について解説している本です。
初期仏教と大乗仏教のちがいを押さえたうえで、『般若経』や『法華経』、『華厳経』などの大乗経典や、浄土教および禅などの教えについて、大胆な比喩を用いながらわかりやすく説明がなされています。また補講として、大竹晋による『大乗起信論』研究の紹介がおこなわれています。
「おわりにかえて」で著者は、「大乗仏教が釈迦の教えとどれくらい隔たったものであり、その一方でどういう点に共通性があるのかを、できるだけ客観的に提示すること」が本書のねらいであると述べています。それとともに著者は、富永仲基の仏教批判を紹介して、著者自身もまた、実証的な観点から大乗仏教の歴史を解き明かしてきた仏教学の立場に立脚していることを明確にしています。
実証的な仏教学の成果を、仏教についてのくわしい知識をもたない読者に紹介している入門書としては、親しみやすい内容の本だと感じました。大乗仏教が初期仏教からかけ離れた教説を含んでいることを明らかにしつつ、そうした多様な教説がさまざまな人びとにとっての救いとなってきたことに、宗教としての意義を認めるべきだということを、著者は随所で語っています。ただ、こうした著者の宗教観それ自体には、個人的にはあまり魅力を感じられなかったのですが、仏教学の研究者としてはこれが良心的な態度だというべきなのかもしれません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宗教
- 感想投稿日 : 2023年2月5日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2023年2月5日
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