一流企業や科学技術庁のオカルトへの傾斜や、稲盛和夫や船井幸雄らの経営思想を追いかけ、その背後にあるニューエイジ・サイエンスが現代の資本主義とどのように結びついたのかを解明している本です。
著者は「カルト資本主義の司祭たちは、欧米の文献をひもといたり、思想史の知識をひけらかしながら、“布教”している。現象面を報告し批判するだけでは、対抗できない。そこで、単行本を書くにあたっては、彼らカルト資本主義者たちの思想的な源流や、その正当性を思想史、科学史にまで踏み込んで取材をした」と述べていますが、この点では本書の議論は十分だとは思えません。もっとも思想史や科学史の観点からスピリチュアル的な経営哲学・経営思想の淵源を明らかにするという仕事は、ジャーナリストである著者に期待するべきものではなく、他に適切な論者によってなされるべきでしょう。
むしろ本書を読んで一番残念に思ったのは、いわゆる「日本的経営」への踏み込みが甘い点です。著者は、政治的にはまったく異なる立場に立つはずの山本七平の『「空気」の研究』(文春文庫)を「名著」とまで呼んで、会社のために身も心も尽くす日本の労働者たちを囲い込もうとする「カルト資本主義」のいかがわしさを摘発していますが、その過程で俗流の日本文化論に著者自身が陥るという、いわばミイラ取りがミイラになるような立ち回りを演じてしまっているようにも見えてしまいます。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
政治・経済・社会
- 感想投稿日 : 2017年12月29日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年12月29日
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