古事記講義 (文春文庫 み 32-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2007年3月9日発売)
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感想 : 13
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古老の「語り」という形式で『古事記』の現代語訳をおこなった著者が、四回にわたって『古事記』について解説した講義をまとめた本です。

著者はすでに『古事記』の入門書として『古事記を読みなおす』(ちくま新書)を刊行しており、そこでは「記紀神話」を一つの完結した神話体系とみなす解釈を批判し、『古事記』のなかにポリフォニックな「語り」を聞き取ろうとする試みがなされていました。本書でも、『古事記』は正統な歴史書である『日本書紀』を編纂する試行錯誤の過程で誕生した者であり、主流からはずれてしまった歴史書のひとつだという主張がなされており、前著を踏襲する内容となっていますが、ヤマトタケルを中心とする英雄叙事詩の解釈や、出雲神話にかんする議論などに立ち入って説明がなされています。

とくに英雄叙事詩についての考察では、石母田正や西郷道綱による解釈が、日本史上の一時代に比定されていたことで批判を招きやがて議論が終息を迎えてしまったことに触れたうえで、『古事記』における英雄叙事詩的な内容をあくまで物語としてとらえる著者自身の立場が提出され、その物語的な構造と意味を解き明かそうとしています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学研究・批評
感想投稿日 : 2019年10月19日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年10月19日

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