屍蘭: 新宿鮫3 (光文社文庫 お 21-7)

著者 :
  • 光文社 (1999年8月1日発売)
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高級エステティック・サロンの若き女経営者として知られる藤崎綾香には、22年間昏睡状態を続ける従姉の須藤あかねがいました。綾香は幼い頃、自分をいじめていたあかねの命を救うため、腎臓を提供することを求められます。そんな自分の運命に絶望していた綾香を救ったのは、看護師の島岡ふみ枝でした。しかし、そのためにあかねを植物人間にしてしまうという罪を背負った綾香とふみ枝は、お互いに支え合うことで、その後も次々に罪を重ねていくことになります。

ふみ枝が務めている釜石クリニックで、強制的に堕胎させられたカップルがいました。しかも、クリニックに苦情を申し立てにいった青年が行方不明になっており、鮫島はクリニックの周辺を捜査します。一方、ふみ枝に警察の疑いの目が向けられていることを知った綾香は、元新宿署の刑事だった光塚という男と協力し、鮫島を失職に追い込む工作を仕掛けてきます。以前から警察署の中で疎んじられていた鮫島は、数少ない理解者たちに支えられながら、事件の真相へと迫っていきます。

結末は早い段階で見えるのですが、それでも鮫島がじわじわと追い込まれていく展開には思わず引き込まれてしまいます。

「解説」を執筆している千街昌之は、前作『毒猿』と本作が、ちょうど京極夏彦の『鉄鼠の檻』と『絡新婦の理』と同様に、男性原理と女性原理を描く対をなす作品だと指摘していますが、この解釈にはうなづかされました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説・エッセイ
感想投稿日 : 2017年1月18日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年1月18日

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