竹田欲望論の立場から、自己や他者、恋愛、社会、死といった問題についてどのように考えるべきなのかを論じた本です。
われわれ人間は、動物とは異なり、あらかじめ設定された世界と身体の関係によって欲望のありようが定められてはおらず、社会とかかわっていくことを通して、「自分」を活かしエロスを汲みあげることのできるような新たなルールを設定することができます。著者はこうした人間にとっての世界のあり方を、「欲望ゲーム」と呼びます。本書は、欲望ゲームの主体である自己が、世界のなかでみずからのアイデンティティを確立し、恋人や社会と関係を結んでいく姿を描いています。
また最終章で著者は、死の問題に触れています。われわれの実存にとって死は、世界からエロス的な可能性を汲みあげることを不可能にするという意味をもっており、欲望論の臨界を示しています。著者はニーチェの永遠回帰の思想に独自の解釈をおこない、自分の生の全体を肯定できるかどうかというぎりぎりの問いを通り抜けることで、それ以上の現実はけっしてありえなかったという深い了解が訪れるという道筋を示そうとしています。
著者の哲学の応用編というべき内容の本です。著者の実存の立場から、実存の有限性という意味をもつ死の問題について論じられている箇所は、興味深く読みました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2017年2月22日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年2月22日
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