少年たちはなぜ人を殺すのか (ちくま文庫 み 18-5)

  • 筑摩書房 (2009年7月8日発売)
3.53
  • (4)
  • (4)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 83
感想 : 10
3

社会学者の宮台真司と、精神科医の香山リカの対談。神戸の酒鬼薔薇事件や佐賀のバス・ジャック事件など、少年たちが起こした殺人事件をとりあげて、彼らが犯罪へと走った理由やその対策などが語られています。また、佐賀のバス・ジャック事件を題材に『ユリイカ』を制作した映画監督の青山真治を交えた鼎談や、宮台・香山が参加したシンポジウムも収録されています。

伝統的な共生価値がうしなわれて、自分の立っている場所の「底が抜ける」という事態が起こりはじめたことで、まじめな少年たちによる「理由なき殺人」が起こるようになったのではないかというのが、両者の共通の理解になっています。

とくに印象的だったのは、どのようにすれば犯罪を防ぐことができるのかということだけを考えるのではなく、犯罪が起こったときに社会はそれに対してどのように対応するべきなのかということを考えておかなければならないという宮台の指摘です。『ユリイカ』で役所広司が演じる運転手がとった行動は、少年犯罪が増えたときにも「矜持を失わないため」の「倫理的な振る舞い」なのであり、それが少年犯罪を減らす効果があるのかということだけに目を向けて、その倫理性を語ることから逃げつづけるのならば、「少年犯罪を減らすこと「すら」できない」と、宮台は主張しています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済・社会
感想投稿日 : 2014年3月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年3月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする