啓蒙主義や左翼公式主義に則ったマンガ評論を一刀両断した本です。
本書によってマンガ評論の新しい地平が準備されたという意味では、この分野におけるエポック・メーキングな著作と言えるように思います。ただ、「封建主義者」を自称する著者は、旧来のマンガ評論を批判するときに鋭い筆の冴えを見せるものの、著者自身のマンガ評論の枠組みを提出している箇所は、少し抽象的な議論にとどまっているような印象をぬぐえません。著者はマンガを「コマを構成単位とする物語進行のある絵」と定義し、線上性と現示性の組み合わせによってマンガを読み解こうとしているのですが、日本語の言語構造との関係を示唆する以上の目立った結論は示されていません。
より重要なのは、本書の中核をなす「現代マンガ概史」でしょう。著者は、1945年以前の「前史」を置き、1945年から80年代以降を6つの時期に区分してそれぞれの時代の達成を簡潔に論じており、マンガ史について考察するための足がかりとなるような、貴重な見取り図を提示しています。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
メディア・サブカルチャー
- 感想投稿日 : 2016年6月19日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年6月19日
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