日本を代表する美学者の一人であり、「エコエティカ」(生圏倫理学)の提唱者としても知られる著者が、鎌倉大仏殿高徳院でおこなった講義の記録をまとめた本です。
池田雅之が執筆している本書の「編集後記」に「本書は今道哲学の一番手ごろな……入門書であり、一つの集大成ではなかろうかと思われる」と書かれているように、芸術・宗教・倫理にわたる著者の思索がテーマにとりあげられ、それぞれにかんしてわかりやすいことばで説明がなされています。また、西洋と東洋の双方の哲学に深い造詣のあった著者らしく、プラトン、孔子、荘子の思想についてある程度立ち入った議論がなされています。
ただし、本書に収められた講義は一般向けに語られた内容であり、本書の議論にもとづいて著者の思索の哲学的な基礎について検討をおこなうといったことはできないように思われます。とりわけ倫理についての叙述では、現代文明に対するありきたりな批評的感想が書き連ねられているようなところも多く、エッセイふうの内容に感じられました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2020年10月25日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2020年10月25日
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