初めて読んだ葉室鱗さんの作品。
文章は端正でたいそう美しく、自然の描写や差し挟まれる情景を読むうち、自分の心が清められていくようでした。
蟄居しなければならぬ身の戸田秋谷とその家族。
目付の役を担った壇野庄三郎。
村に暮らす人々と秋谷の息子の友、源吉もいて淡々と語られる日常。
とはいえ、なぜ秋谷が幽閉される立場であるか、武家の権力争いや裏での悪事など、一筋縄に行かぬ人の世は今にも通じること。
日々をおろそかにせず生きる志の高い秋谷が、この作品を品の良いものにしているように思います。
源吉が幼いながらも示した生き方には胸が締め付けられました。
郁太郎の思い、秋谷の思い、庄三郎の思いがじんじん胸に迫ってきて熱く心がうずいた作品でした。
もったいぶらず、読みやすく、読者に親切な作家さんで好感を持ちました。他の作品も読んでみたいです。
静謐な空気のなか、蜩の鳴き声に包まれるラストはやはり良かったです。
この作品を堪能できる有り難み…。日本人に生まれてよかった(^ ^)!
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年6月2日
- 読了日 : 2012年6月2日
- 本棚登録日 : 2012年6月2日
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