泣かない女はいない

著者 :
  • 河出書房新社 (2005年3月15日発売)
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『泣かない女はいない』
四郎と三年間同棲中の澤野睦美。
1999年9月、大宮市郊外にあるK電機の下請け会社大下物流に入社、毎朝「シャトル」電車で通う。自分より5・6歳若い女子社員4名と40歳前後のパート3名とで伝票処理をしている。横田社長を始め牧歌的なムードの職場に慣れてきた矢先、親会社の本部長萩生田が来てパート一人がリストラされた。
12月忘年会、各自それぞれカラオケで歌を披露する中いつも伝票を届ける倉庫の班長樋川が「NO WOMAN NO CRY」を歌う。
2000年2月 4月をもって親会社に吸収合併されることとなった大下物流に萩生田が所長として赴任。次第に職場のムードが変化し、戸惑いや不満が出始めた。
三月 解雇が決定した横田元社長が倒れ入院する。樋川の運転する車で他二名と一緒に見舞いに行った帰りの車中で、樋川は退職を決意し睦美は樋川への自分の想いをはっきりと意識する。
四郎に別れを告げたあと、睦美は風邪で寝込み仕事を休む。数日後、重い足取りで出社した朝、会社の門のところで退職が決まり私物を取りに来ていた樋川と出会う。樋川のお別れの挨拶を聞きながら睦美は告白しようか迷う・・・

『センスなし』
夫良一は自分の不貞が発覚してからは必要なものを取りに来る以外殆ど家に帰らなくなった。妻保子は押し入れから自分の生きてきた証を少しずつ引っ張り出してきて夫の領域だった場所や物を侵略していく。そこへレンタルビデオ屋から延滞を知らせる電話が入る。良一の借りたビデオを夫の部屋で探す。アダルトビデオが三本。保子はぶらぶらと散歩のついでにビデオを返しに行く。うっすら雪の積もった景色の中、放置された作りかけの雪だるまを見て自分の幼かった時代を思い出す。返却ビデオと延滞料13,230円を受け取った店員に「まだ未返却が三本ありますよね」と言われる保子。ビデオ店を出て歩く。怒りと呆れで体が熱くなる。歩道橋を渡り降りたところで雪に滑り仰向けに転ぶ。保子は痛みでしばらく空を見上げたまま動けなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2010年7月5日
読了日 : 2010年7月5日
本棚登録日 : 2010年7月4日

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