萩尾望都さんの『バルバラ異界』で、
他人の夢に入り込む夢先案内人、という設定に夢中になった私。
ブクログ仲間さんのレビューでこの『夢のカルテ』を見つけて
これはもう、絶対に読まなくちゃ!と、早速借りてきました。
雑居ビルの一室で、たったひとりでカウンセリングルームを営んでいる夢衣(ゆい)。
毎夜、女性を襲う殺人鬼となった自分の夢を見る男性も訪れたりするのに
かよわい女性ひとりっきりで大丈夫なの?と心配になってしまうのですが、
彼女が他人の夢の中に入り込めると気付いたのは、なんと4歳の頃。
女手ひとつで自分を育ててくれた母親と、少しでも長く一緒にいたかったから、
というのがいじらしい。
第一章『刑事の夢』で出会った健介と、さまざまな事件の謎を解きながら過去の傷を癒し、
心を通わせていく物語なのだけれど
愛する人の夢も覗き込める上に、心理学の素養もあるのだから
彼の心をつかむのもさぞや簡単なのだろうと思ったら
彼への恋愛感情は逆転移なのでは?とか
彼が自分に寄せてくれる好意も、実は患者にありがちな陽性転移なのでは?とか
カウンセラーならではの悩みの、なんと複雑なこと!
映画やテレビの脚本を書かれていた高野さんらしく
登場人物の輪郭がくっきりと際立っているので
例によって脳内キャスティングが着々と進行したりして。
夢の中を漂い、入り口となるポイントにすうっと身を滑り込ませる
儚げな夢衣の姿を、ぜひ映像で見たくなる物語です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
た行の作家
- 感想投稿日 : 2013年4月28日
- 読了日 : 2013年4月27日
- 本棚登録日 : 2013年4月28日
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コメント 1件
まろんさんのコメント
2013/05/01