何年か前、小学校の同窓会に行ったときのこと。
久しぶりに会った幼なじみの男の子(というより、もうおじさんになってたけれど)が、
思い出し笑いしながら言いました。
「母親に、『まろんちゃんち行くけど、一緒に行く?』って言われて、
なにして遊ぼうかなぁって喜んでついてくんだけど、まろんちゃん、
『いらっしゃい』って言ったっきり、いつもず~っと本読んでるんだよなあ」って。
「うわあ、ごめんね!せっかく来てくれたのに退屈だったよね」と今更ながら謝ったら
「いや、いいよいいよ。本読んでるまろんちゃんをじーっと見てるのも楽しかったから」
なんて言ってくれて。
あらまあ! 時計を巻き戻して、あの頃に戻ることができたら
読みかけの本を置いて仲よく一緒に遊んで、ほのかな初恋が育ったりしたのかしら♪
などと、こっそり都合のいい想像をしてしまった私なので
『思い出のとき修理します』というタイトルと、
「もしも『過去』を『修理』できるとしたら?」という帯のコピーに
おお!時を遡って、悲しい思い出を修復するお手伝いをしてくれる
素晴らしい時計屋さんのお話にちがいない!と、思いっきり早合点してしまいました。
そんなファンタジックな設定ではなくて (ちょっとざんねん!)
シャッターが降りたお店ばかりの寂れた商店街に起こる不思議な事件の謎を
心やさしい時計屋さんが解いていく、ほのぼのとした物語。
不思議な事件のきっかけとなるのが、猫がくわえてきたオルゴールだったり
たった一度のデートのためにチクチク縫ったワンピースだったり
季節はずれの日傘と子ブタのぬいぐるみだったりして
なんだかそれだけで、なつかしく甘酸っぱい思いがこみ上げます。
ミステリなのか、ファンタジーなのか、恋の物語なのか、ちょっと曖昧で
「う~ん、どれかにもっと思いっきり浸りたい!」という気分にはなるけれど、
理容店の孫として、商店街で暮らすことに密かに罪悪感を抱く明里を
やさしく、温かく見守る時計屋さんが素敵なので、いいことにしよう♪
人間と神様の間を行ったり来たりしている、というか
まるで妖精パックのような、神出鬼没で屈託のない太一も、とても魅力的だし。
やっぱり過去は変えられないから、あの頃に戻って初恋をやり直すこともできないけれど
思い出を時間でやわらかくくるんで、今の気持ちで色を塗り替えて
明日の私に、「はい!」と手渡してあげたくなる、やさしい物語です。
- 感想投稿日 : 2013年2月14日
- 読了日 : 2013年2月13日
- 本棚登録日 : 2013年2月14日
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