残り全部バケーション

著者 :
  • 集英社 (2012年12月5日発売)
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悪事の下請けで食いつなぐ、なぜだか憎めない小悪党の二人組。
「実は浮気してました」なんてあっけらかんと告白しちゃう父親と一緒に
怪しげなメールで「友達になりましょう」と言ってきた男の車に同乗してしまう家族。
親に虐待されているらしいこどもや、車のトランクに押し込められる女性。
問題児とされる同級生の一挙一動が気になってしかたない小学生。

ちょっとタガが外れているような人や、ワケあり感満載の人が織りなす
ジグソーパズルのような、お馴染みの伊坂ワールドが展開します。

天下の大悪党になってやる!などという野心はカケラもなく
「へへ、俺ってしょうもないやつだよなぁ、でも許してね♪」と心底思ってそうな溝口、
柳のように風の吹くまま、といった風情で何を考えてるか今ひとつ伝わってこないのに
縁もゆかりもないこどものために骨を折ったり、変なところで繊細な一面を見せる岡田。
万が一捕まって刑務所に入っても、
「お前らそんなチンケな犯罪しかしてこなかったのか・・・」
とため息をつかれそうなせこい犯罪を重ねるふたりを
好きにならずにいられないのが不思議。

第一話と最終話をメールという小道具で繋ぐ小粋な企みも
『明日に向かって撃て!』に情けなさと苦笑と脱力感を10%ずつプラスしたような
人を喰ったラストシーンも楽しい、愛すべき小悪党物語です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行の作家
感想投稿日 : 2013年8月17日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年8月11日

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