短劇 (光文社文庫 さ 24-2)

著者 :
  • 光文社 (2011年2月9日発売)
3.26
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本棚登録 : 2037
感想 : 191
4

ブクログ仲間さんのレビューで、覚悟はしていたけれど
坂木さんの思った以上にダークな一面を垣間見て
まさに、「甘いぞ。苦いぞ。おどろくぞ。」

26篇のショートショートが収められていますが、
甘い=10%、苦い=70%、驚く=20%
という感じでしょうか。

坂木さんといえば、心癒される温かい読後感や
問題を起こしてしまった人物も含め
登場人物への手厚いフォローが持ち味と思っていたけれど、
『先生と僕』あたりからひとさじずつ苦さが加わってきて
『夜の光』での、高校生たちの家族への絶望感は
かなりヒリヒリ後を引く痛みとなって残って。。。

その後での、一気に苦さ倍増の、この『短劇』!
読んでいて辛くなるような作品もかなりありましたが、
こういうシニカルな一面や、混沌とした闇を抱えているからこそ
『青空の卵』や『和菓子のアン』でみせる坂木さんの温かさが、
地に足がつかないふわふわしたものではなく
清濁併せ呑む苦しさの中から濾過に濾過を重ねて生み出した
きらめくような一滴なのだ、と信じられる気がしました。

たぶん坂木さんにとってのガス抜きともいえるこの1冊、
そう思いつつも、このあとしばらくは
「温かい坂木さん」作品が続きますように!
と祈ってしまうわがままな読者を、
坂木さんが許してくれますように!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: さ行の作家
感想投稿日 : 2012年6月6日
読了日 : 2012年6月6日
本棚登録日 : 2012年6月6日

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コメント 3件

円軌道の外さんのコメント
2012/06/07


坂木さんの作品は
読んだことないんやけど、
自分の中では
勝手に瀬尾まいこさん的な
あたたかな読後感をもたらしてくれる作家のイメージだったんで、

そういうダークな作品もあるんやぁって
ちょっとビックリでした(汗)


それにしても
まろんさんの
『清濁併せ呑む苦しさの中から濾過に濾過を重ねて生み出した
きらめくような一滴』って
ほんと素晴らしい表現ですね!

坂木さんに対する愛情いっぱいのレビューに
自分も無性に読んでみたいって思いました!!


まろんさんのコメント
2012/06/08

まっき~♪さん

びっくりだったけど、まっき~♪さんのレビューのおかげで
覚悟をもって臨んだ(?!)ので、金縛り状態は免れて、助かりました(笑)
了解もなく、レビューに登場させてしまってごめんなさい(>_<)

でも、ああいうピリっとしたショートショートだと
いつものほんわか作品では隠れがちな
坂木さんの筆力の確かさが、際立ちますよね!

とはいえ、一緒に、坂木さんのほんわか作品完成を祈りましょう!

まろんさんのコメント
2012/06/08

円軌道の外さん、いつもコメントありがとうございます♪

坂木さんは、デビューから追いかけてる作家さんなので
ついつい力んでレビューを書いてしまって、はずかしい(>_<)

さすが本を愛する円軌道の外さん、
本来の坂木さんのイメージを的確に把握してくださってます!
世界をやさしく温かい目でみつめている円軌道の外さんには
坂木さんの作品は、きっと気に入っていただけると思います!

ひきこもり探偵シリーズの1巻目の『青空の卵』なんかは
ブックオフだと、100円とかで売ってたりするので
ぜひぜひ読んで、レビューを書いていただきたいです(*^_^*)

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