検察側の罪人

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  • 文藝春秋 (2013年9月11日発売)
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アガサ・クリスティの、あの戯曲を思い起こさせる
タイトルだけれど、こちらの方がぐっと重苦しい。

正義とは何か。
司法とは何か。
どうするのが正しかったのか。

金貸しをしていた老夫婦が殺害され、容疑者の1人として
23年前に少女を暴行し殺害しながら逃げおおせた男の名が
あがってきた。
検察にも、警察にも、過去の事件に思い入れのある人間が
捜査に関わっていた、、、


決定的な証拠がないのをいいことに、否認を続け、
罪を逃れるだなんて、ましてや、それが、いたいけな
少女に対する卑劣な犯罪だなんて、正直、反吐が出るし、
そんな奴、どんな目にあっても同情なんてする気になれない。
その少女を可愛がっていた検事最上が、今度こそそいつが
犯人であってくれればと思うのも、よく分かる。
今度こそ、罪に問うてやると熱心になるのも無理はない。
捜査をそちらに誘導するぐらいは「あり」だと思う。

周囲に認められた優秀な検事である最上。
そこで踏みとどまってほしかった。
そして、罪を犯したものには、時効であろうと、
なんらかの形で報いをうけてほしかった。
事態が、過酷なほうに流れていくのには、目を覆いたかった。
最上に、覚悟があるのが、いっそう辛かった。
それでも、支えるものがあるのは、せめてもの、一筋の光。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2013年10月24日
読了日 : 2013年10月24日
本棚登録日 : 2013年8月14日

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