ハーモニー (ハヤカワ文庫 JA イ 7-2)

著者 :
  • 早川書房 (2010年12月8日発売)
4.26
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「ようやく世界に失望し、その失望のままにやり過ごす術を学んだのだ。」

ライトノベル(すみませんよくわかっていません)をよんでいるみたいでちょっと小っ恥ずかしかったけれど、アニメを観ているみたいでとても楽しかったし、なんだかなつかしかった。厨二病的ノスタルジー。

この先デッドメディアになるのは、精神か、肉体か。しかしこの「ハーモニー」にまで至るには、"意識下"において、しかるべき種族(人類)の温存を選択する、という"意識"が根底になきゃいけない気もするけれど、それはありうるのだろうか、ハーモニー前に?そこまでの気概の根拠はなんなのだろう。ただ"平和な世界"を望む、ということだけじゃなくて。なんて、こんなことはおいておいて。
たしかに、若者たちはどんどん温厚になっている。いい子たちばかりだとおもう。けれど相対的に、無関心でもある。感情に踊らされているように見えることも少ないような気もする。なにかを察するという能力もなくなってゆく。だって怒られないから。びくびくする必要もないから、だれかのご機嫌をとる必要性もないから。だから優しいけれど、気が利くということが少ない。苦悩がなくなり、芸術という分野もそのうち廃れるか、まったく違うものにとってかわられるのだろう。わたしたち "はざま世代" はこの世界の移り変わりを目の当たりにしている。それで苦しくて生きづらいひともたくさんいるだろう。わたしたちだけが板挟みになり苦労しているように思えるだろう。わたしたちの経験してきた苦労はもう、役には立たなくなるだろう。けれど、わたしたちはなんだかすごいことを経験し見てきたのだ、なんて、わたしはちょっと嬉しくて、笑っちゃうくらいおもしろい。人類のこれまた進化の岐路。"つぎはぎの進化" の。そしてこれは、老害のたわごと。








「人間は進歩すればするほど、死人に近づいてゆくの。というより、限りなく死人に近づいてゆくことを進歩と呼ぶのよ。」

「何とも皮肉な話だ。我々の魂とは、進化がその場その場で継ぎを当ててきた双曲線的な価値評価の産物でしかない。完璧な人間には、魂そのものが不要なのだ。」

「そこでわたしはふと考えた。この自己嫌悪という感情は、その感情を誘発する脳の機能は、どのような環境で必要とされら進化上組みこまれたのだろうか、と。」

「人間は、進んで自らの組み上げたシステムに従って、対立や逡巡、苦悩を生む厄介な機能としての意識を除去してしまうべきなのではないか。」

「だからわたしはね、そんなものをカラダに入れられる前に、本が読むものでなく自分自身になっちゃう前に、女の子のまま死のうと思ったの。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年4月27日
読了日 : 2024年4月11日
本棚登録日 : 2024年4月27日

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