小野紀明『古典を読む』岩波書店、読了。何かを完全に理解することは不可能だが恣意的理解も避けていきたい。「古典を読む」ことのアンチノミーとはまさにその現場である。本書は、制約と困難を承知の上で、アプローチしていく重要性と手法を紹介する。軸になるのはガダマーの「解釈学的循環」。
「古典を読む」ケース・スタディとしてニーチェの『この人を見よ』を取りあげる。二つの受容例を紹介、読む態度の相違が人間理解・世界認識と密接に関わっている事を明らかにする。古典を読むことは他者を理解すること。しかし本書は哲学的解釈学の案内ではない。
著者の専門は西洋政治思想史。「他者と粘り強く対話を継続していくことが政治の原形」との指摘は古典も同じだが、双曲線の如く対象に真摯に向き合っていく姿勢は古典だけに限られない。新しい人間学を構想する好著。 http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-028321-S
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
解釈学
- 感想投稿日 : 2013年2月2日
- 読了日 : 2013年2月2日
- 本棚登録日 : 2013年2月2日
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