大浦慶といえば、長崎の女傑であり“龍馬の背中を押した女のひとり”。。ではなかったか、というくらいの予備知識。予備知識というか、どこかの小説で出てきたんだろうし、それがなんだったかも思い出せないのだけれど。
いやはや、面白かった。龍馬との関わりはそこまで描かれていなかったけれども(実際ごく一時しか接触はなかったのだろうし)でも龍馬だけでなく、激動の幕末~明治の才たる人物たちが多数登場するし、歴史に黒文字で年表に書かれるような出来事の数々が、ひとりの女商人の半生を通して時代のうねりを見せてもらえているようで、その時の風を受けているかのように心におもい浮かべることができた。年表のなかにはいったようなかんじ。
いろんな見方があるだろうけれど、才能と勇気と向こう見ず、運をつかむ力、、、「才覚さえあれば」というキーワードにもなっているこの台詞が、ある意味この物語の全てでもあろうし、力強い生き様と穏やかな幕引きの光景に、なんとも後味の良い、深蒸した味わいのある読後感。商いはモノを売り買いすることではあるけれど、大商人たる傑物は、利を求めるだけでなく、かかわった人々の志に共鳴して、ひとのぶんまで思いを貯めて、浪漫を膨らませるような、溢れる思いの波に乗れる人なんだろうなあ。読後の茶一杯がおいしく感じる1冊。良き世の中になりますように。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2020年9月17日
- 読了日 : 2020年9月17日
- 本棚登録日 : 2020年9月17日
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