ロボットの夜 (光文社文庫 い 31-2)

  • 光文社 (2000年11月1日発売)
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感想 : 6
3

テーマはもちろん「ロボット」。ロボットというからにはSF偏重かと思いきや、どちらかと云えば寓話や怪奇ものが多く、そのへんは流石に異形だなあと今更ながらに感心。
冒頭を飾る、草上仁「サージャリ・マシン」からして、AIの思弁(苦悩)がSF的ではあるが、ストーリーの畳み掛けかたは、まんまホラー。ここより始まる異形流・ロボット譚への期待を高めてくれる佳作。
ちなみに、平山夢明「卵男(エッグマン)」、菅浩江「KAIGOの夜」に関しては、それぞれの著作(「独白するユニバーサル横メルカトル」「五人姉妹」)で既読だったが、成る程、このロボットの夜の中でも抜きん出た傑作だった。特に「卵男」は氏の「SINKER 沈むもの」を彷彿させる怜悧なダイアローグが秀逸。当然、鬼畜。
前半で良かったのは、菊池秀行「保が還ってきた」。全体を包むダークな雰囲気。ざらりとした物語。救いのないラスト含め、ノワールな仕上がりでぐいぐい読ませる。フェルマーの大定理をモティーフにした堀晃「背赤後家蜘蛛の夜」の不穏さもいい。そして、眉村卓「サバントとボク」、岡本賢一「LE389の任務」というテーマ性の類似した二編も良かった。暗く救いのない物語が多いなか、力強いラストを提示する。同じくラストで鮮烈な印象を残してくれたのは、渡辺浩弐「2999年2月29日」。これは一般の読者にも訴えかけられるであろう普遍性をもったストーリー。後を引く心地良さは「ロボットの夜」中ナンバーワン。
後半は異形らしく怪奇ものが目白押し。なかでも良かったのが、横田順彌「木偶人(ぼくゆうびと)」。実在のSF作家・押川春浪に架空の弟子を配して語られる不可思議なおはなし。明治末期という時代背景を活かしながら、春浪とその弟子の回顧で綴られていくという構造。文体も巧みだし、やはりベテランはひと味違う!
タイトルの割りには薄気味悪いストーリーの奥田哲也「虹の彼方に」も妙に胸に引っかかる。ラストと締め括る竹河聖「角出しのガブ」のホラー度、怖さはこの編随一だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アンソロジー
感想投稿日 : 2010年12月26日
読了日 : 2010年12月26日
本棚登録日 : 2010年12月8日

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