憑依 (光文社文庫 い 31-33 異形コレクション 45)

著者 :
  • 光文社 (2010年5月11日発売)
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感想 : 11
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唐突にハマってしまった「異形コレクション」。テーマは「憑依」だが、妄執の類まで取り揃えた、なかなかのバリエーション。
憑依の幕開けに相応しい春日武彦「一年霊」で軽く肩慣らし。かつての阿刀田高を思わせる、岡部えつ「奇木の森」、松村比呂美「溶ける日」の不条理譚と続く。これはなかなか妖しく心地好い。
そんな中、前半の圧巻は、真藤順丈「飢え」と入江敦彦「修羅霊」。ことに「修羅霊」は、異形コレクション内で続く、入江氏の「テ・鉄輪」シリーズの一篇らしいが、“京都リミテッド京極堂シリーズ”ともいうべき世界観と完成度。キョートでヒョーイ、これはオススメ!この「テ・鉄輪」は、いずれ独立した短編集として刊行してもらいたい。
そして後半。上田早夕里「眼神」は矢張り格別、いや別格の面白さで、憑きもの(民俗)に巧くSF味を絡める。冒頭、主人公が畦道で遭遇する奇妙なものの描写の恐ろしさ。さりげないけど怖い。
そして、平山夢明「箸魔」。あの短い話のなかによくぞあれだけツイストが加えられるものだ!と素直に感動。流石に巧い。そして鬼畜!
志麻子さんの「憑依箱と嘘箱」と町井登志夫「スキール」はかなりの変化球だが、これも面白かった。特に「スキール」はクルマ好きにはタマラナイお話。(大蛇と云われて、光岡のアレがすぐ頭に浮かぶ私も相当な…)
トリを務める朝松健「生きてゐる風」は当然、一休さんが主人公。荒唐無稽に拍車のかかる伝奇アクションで気持ち良く締め括っていただきました。満足の一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アンソロジー
感想投稿日 : 2010年12月5日
読了日 : 2010年12月5日
本棚登録日 : 2010年12月3日

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