魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1999年4月15日発売)
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本棚登録 : 302
感想 : 20
4

命尽きるまさにその時、生への強い執着を持ちながら愛する女と交われば、同じ姿でもう一度この世に生まれることができる……「忍法魔界転生」!!

この恐るべき忍法によって転生したのは天草四郎時貞、荒木又右衛門、宮本武蔵、田宮坊太郎、宝蔵院胤舜、柳生如雲斎利厳、柳生但馬守宗矩の7人。
この転生衆の背後でさらに森宗意軒、紀州大納言徳川頼宜が天下を狙って蠢いています。

そしてその強敵達に立ち向かうは、柳生十兵衛三厳!!

それぞれが主人公になれるほどの大物達を、こんなに寄せ集めて戦わせちゃうのがすごい。
時代が違うけれどあの人とあの人が戦ったら…とか、あの人たちが手を組んだら…とかいう想像を実現してくれました。
いくら登場人物達がすごくても、それを活かしきったおもしろい小説になるかどうかが心配ですが、そこは流石、山田風太郎です。

上巻は7人の転生するまでの物語が主軸。
肉体と技だけでなく、心までも鍛えぬく忍耐の人生を送ってきた7人が、敵の巧みな誘惑によって生と性への欲望を爆発させる死に際が壮絶。
生前が賢者であっただけに、転生後の欲に忠実な堕落した姿は恐ろしくも悲しいです。

下巻から十兵衛と7人の戦いが本格化しますが、どの戦いも大盛り上がりなので、1ページ1ページ、1文字1文字に興奮しっぱなしでした。
常にピンチで常にぎりぎりの死闘。
そして、われらが十兵衛がヒーローとしてかっこよく戦っていく爽快さとは別に、柳生十人衆の献身が悲しい。到底適わぬ強大な敵を前に一人ひとり虫けらのように散っていく姿に胸が痛くなります。

とにかく柳生十兵衛という男が魅力的でした。
これだけの大騒ぎを起こしながらの最後の収集の仕方も流石です。多くの戦いと死を迎えた後の、寂寥感溢れるラストに満足のため息がこぼれる傑作でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 忍法帖シリーズ
感想投稿日 : 2012年1月27日
読了日 : 2012年1月26日
本棚登録日 : 2012年1月11日

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