芥川龍之介全集〈1〉 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (1986年9月1日発売)
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本棚登録 : 434
感想 : 47
5

 読書力養成読書、4冊目。何人かの文豪の作品は、ちくま文庫の全集で買いそろえてあるので、これを読んでいきます。読書力読書としてカウントする冊数は、巻数に関係なく1タイトルを1冊とします(巻数のある作品はすべてこうカウントしていきます)。ずっと本棚に並んでいただけの文庫全集、この機会に全部読んでやろうじゃないの、と意気込んでおります。

 てことで、まずは芥川龍之介から。1巻に収録されている作品は、以下。
老年
青年と死
ひょっとこ
仙人
羅生門

孤独地獄


酒虫
野呂松人形
芋粥

手巾
煙草と悪魔
煙管
MENSURA ZOILI

尾形了斎覚え書
道祖問答
忠義

世之助の話
偸盗
さまよえる猶太人
二つの手紙
全集なので制作順に収録されています。私はもともと、どの作家も処女作から順番に読んでいくのが好きなので、全集をこうして文庫で読めることがとてもうれしく、ありがたく思います。

 芥川龍之介、めちゃくちゃおもしろい! 時代や場所、語り手、文体、すべてがガラリと違う作品ばかりで、次はどんな話だろうとワクワクしながら読みました。しかもどれもおもしろかった。風景描写や心理描写が素晴らしく、過不足なく巧みに表現されていて、甚だ失礼ながら「さすが、やっぱり文豪は違う」と思わずにいられませんでした。

 名作といわれる作品は、よく、高校生くらいの若者に読むよう勧められます。多様な価値観があることを知り、感性を磨くために(まさに『読書力』で語られる〈自己形成〉のために)。もちろんこれには激しく同意なのですが、初読再読にかかわらず、大人になってから読むことも大事だと思いました。それまでの人生経験により、若いころには思い至らなかったような深い理解が得られますし、いろいろな角度から想像したり考えたりできるのです。

 私は「羅生門」や「鼻」を若いころに読んだことがありましたが、知識も想像力も未熟すぎて状況理解が足りず、結局どんな話だったか記憶が曖昧だったのです。しかし今回はまるで映像を見ているかのように状況が理解でき、登場人物たちの細かい心の動きまでよくわかりました。おかげで、くすっと笑えたり悲しくなったり憤りを感じたり切なくなったり、じっくり深く味わうことができました。とくに「偸盗」は格別に良かった! 血湧き肉躍り、涙が出ました。「仙人」もお気に入りです。

 この芥川全集は、全8巻。いろいろな本を楽しみながら、2巻以降もちょろちょろと読んでいくつもりです。他の文豪の全集も控えてるしね。ああ楽しみ。

 ただちと表紙がねぇ……。これをテーブルの上に置いておいたら、夫が「何この気持ち悪い表紙は⁉︎」とギョッとしていました。やっぱそうよねぇ。ちとコワイよね。1巻のイラストは「芋粥」の主人公らしいんだけど、私のイメージではこんなんじゃないし……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月18日
読了日 : 2021年6月18日
本棚登録日 : 2021年6月18日

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