日本映画が一番元気の無かった時代、邦画を観るのがダサいなんて思ってた時に、奥山さんが日本映画を復興し良い作品を作ろうと闘っていたとは知らなかった。映画会社が自分の劇場で上映する映画を作ってチケットの売上で興行を上げようとする時代。読んでいて懐かしさを感じながらも、松竹のカラーに合わないと自分の会社の出資を得られず、他で資金集めに奔走する様は、大変な時代だったんだなあと思った。自社の改革に奮闘しながら作った作品は、当たるのもあればそうでないのもあって、最期は松竹を追い出されてしまう。奥山さんがいなければ、監督北野武も生まれなかったのに。「その男、凶暴につき」の製作エピソードは非常に興味深かった。僕は、北野武も、深作欣二も、野沢尚も好きなので、フライデー事件を挟みながら、作品がどんどん当初のものと変わっていく様は、映画ファンとして読んでいて感無量だった。その後に傑作「ソナチネ」を一緒に作りながらも、北野武と齟齬が生まれて離れてしまう無念な想いは哀しかった。才能に惚れた監督に尽くそうという想いと、作品への情熱で良い方にコントロールしたいという想いと、「RAMPO」を再度作り直してしまったように、映画にのめり込んでいく想いを疑似体験しているような気分になった。「GONIN」や「うなぎ」など、好きな作品のエピソードも読めて楽しかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2019年11月9日
- 読了日 : 2019年11月9日
- 本棚登録日 : 2019年11月9日
みんなの感想をみる