よみがえる商人道 (B&Tブックス)

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  • 日刊工業新聞社 (1998年5月1日発売)
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● 商人(あきんど)に常禄なし、稼ぐは一生のつとめ。

● 立身に限りあり、欲に限りなし。

● 商人は蟻の如くに身を養ふようにつとむべし。蟻は正しく義のある虫なり。終日、往来して食物を求め、穴の中に貯へ置きて、冬の用意とす。おのれの求得たる食なりとておのれひとりの食とせず、穴に往る衆と共にす。この故に虫偏に義の字なり。

● 手代の仕損じは手代の罪にあらず。主人の油断にて、主人の罪なり。

● 「分限にはよき手代あること第一なり」とは、暖かな目で見守るだけの余裕ある経営者がいてこそ、人材といえる従業員が生まれてくるわけだ。大事に育てなくてはならない。大事とは甘やかすことではなくて、その手代の仕損じの原因をわかってやる度量である。但し、使い込みなどは即刻馘にしなくてはいけない。仕損じではなく不始末だからだ。

● 戦力となるのは、どの業種にしても兵(社員)なのだということを忘れず、兵の指揮官には大きな器の、といっても度量だけのではない人材を配せよということである。

● 商人たる者の第一条件は、“分際相応”である。分際とは、自分の身分、地位、俗にいう身の程(身分の程度)をいい、これをわきまえて諸事に当たれば、先ず間違いなく商人道を貫くことが出来るという。

● 危は機なり。危機(リスク)を二つに分けて危(リスク)と機(チャンス)にする逞しさを宿した経営者こそが時代に勝ち残るということになる。

● この「商は笑なり」の「笑」は、儲けたという笑いよりも、客がいい商品をよくぞ選んでくれたという純粋な喜びの笑みを商人は常に湛えていなくてはいけないという意味合いを含んでいる。

● 一役無調法(ひとやくぶちょうほう)。これは紀元前千年ぐらいの中国の周の国を武王が統治していたが、この武王を助けて殷の国を討った知恵の補佐官・公旦がいった言葉らしい。なんでもこなせる人間なんて一人もこの世にはいない。万能人間などはいるわけがない。だから、一人ずつの兵(雇用者)をよく観察して、性格、行動力、知識を分析して、上の者が適所に配してやれば、思いがけない戦力になると武王に進言したという。

● 江戸は綺麗に金を使う人が粋(イキ)な人であるのに対し、上方の商人は金で買えないもの、金で売れないモノを持つ人が粋(スイ)な人だということになる。英語でいえば東京のイキはスマート、大阪のスイはピュアーということだ。

● が、前の五日より落ち込んでいるからといって急に経費削減をするというのは商人ではないという。経費を削減することで働く者の意欲が低下すれば、ますます繁盛から遠去かることになるだけである。ところが世の中には、経費削減を第一と考えた挙句に“煽(あお)ち貧乏”になる商人がいるという。あおぎ立てられるように貧乏に追われてしまう商人である。これを江戸時代の商人は、ひそかに“日向(ひなた)氷”と呼んだ。なにかも溶けてしまうのだ。

● 商いとは、損得を考えずにまず善悪を考えよ。

● この“信用”というのは具体的にいえばどういうものになるかというと、経営を単に損得勘定だけで行なうなということである。利益だけを目標にした場合、どうしても義理を欠く状態が起こり、情の部分が薄くなっていき、経営者とその側近たちが私腹を肥やすという点に走りがちになり、分裂を起こしたりして外部の信用を失うことになる。武家の権威失墜に対して、商家は信用失墜をなによりも恐れたのだ。信用は一度失うと回復は容易ではない。次の代になっても信用は戻ってこない。

● 金という厄介なものは、常に天下をものすごいスピードで回っているものだから、常に金の動きを凝視していなければいけないというのだ。少しでも目を離したが最後、金は逃げていくという。

● 貯蓄十両、儲け百両、見切り千両、無欲萬両

● 知識は一応の階級にあって学べば頭に入るものではないか。それに対して、知恵は知識を十二分に応用するところから生まれるものであり、利潤を連れてくる宝だということになる。

● 貯めるのはカネ、使うのはゼニ

● 世渡りは傘の如くすべし。運よき時は開き、運よからぬ時はしぼめるがよし。

● “喧嘩”をして“損”するものの中に、三つの“間”がある。人間、時間、空間である。

● 先用後利の知恵である。信用してこそお互いの売買が成立するというアイデアを用いた。良心、安心、信用。心、心、信のサンシン商法を編み出したのだ。そして支払いの便宜をはかった上に、客(消費者)との納得の商取引が生まれた。この大事な点を商人は忘れてはいけない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス書
感想投稿日 : 2009年7月18日
読了日 : 2009年7月18日
本棚登録日 : 2009年7月18日

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