1969年をピークとする高校紛争を記した一書。
当事者が体験をもとに記した安田講堂1968-1969と異なり、
資料や聞き取りが中心となるがその数は圧倒的であり、
それでいてよくまとまっている。
何者でもない自分と、何かを成し遂げたい自分という
高校生らしい情動の中で、
複雑な時代のうねりに飛び込んで行く学生と、
それに翻弄され、時に向き合う学校。
しかしその経緯・環境・主張から生まれるドラマは多様で、
それぞれに考えさせられるものがある。
個人的には、葛西工業高校や首里高校のエピソードは
他と境遇が異なり興味深かった。
巻末第七章で「高校紛争という史実」と題し、
この事実を埋没させるべきではないとする筆者の主張には
素直に同意させられた。
確かに高校生の主張は未熟で、
中身を伴わない受け売りも多かったのだろうと思うが、
紛争を通して生まれる学校と学生の関わり合いの中に
本質はあると感じた。
大変読みやすいので、ぜひ多くの方におすすめしたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
近-現代史
- 感想投稿日 : 2012年5月6日
- 読了日 : 2012年5月6日
- 本棚登録日 : 2012年4月26日
みんなの感想をみる