高校紛争 1969-1970 - 「闘争」の歴史と証言 (中公新書 2149)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年2月24日発売)
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本棚登録 : 195
感想 : 27
5

1969年をピークとする高校紛争を記した一書。
当事者が体験をもとに記した安田講堂1968-1969と異なり、
資料や聞き取りが中心となるがその数は圧倒的であり、
それでいてよくまとまっている。

何者でもない自分と、何かを成し遂げたい自分という
高校生らしい情動の中で、
複雑な時代のうねりに飛び込んで行く学生と、
それに翻弄され、時に向き合う学校。
しかしその経緯・環境・主張から生まれるドラマは多様で、
それぞれに考えさせられるものがある。
個人的には、葛西工業高校や首里高校のエピソードは
他と境遇が異なり興味深かった。

巻末第七章で「高校紛争という史実」と題し、
この事実を埋没させるべきではないとする筆者の主張には
素直に同意させられた。
確かに高校生の主張は未熟で、
中身を伴わない受け売りも多かったのだろうと思うが、
紛争を通して生まれる学校と学生の関わり合いの中に
本質はあると感じた。
大変読みやすいので、ぜひ多くの方におすすめしたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 近-現代史
感想投稿日 : 2012年5月6日
読了日 : 2012年5月6日
本棚登録日 : 2012年4月26日

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