ほぼ全編、涙ぐみながら読了。まさに完結編。当初は2巻王獣編までだったがアニメ化にあたり追加されたとのことだが、まさにこの巻のためにこれまでがあったと唸らされる。エピローグの「それから四日、母は生きた」の1行に胸に来るものが。あとがきにも「彼が私の中に生まれたときに、もうすでに聞こえていたような気がします」とあり、まさに物語を締めくくる重たい1行だったと感じ入る。
もっと早くに読んでいれば、若い時に読んでいれば、と思う反面、この歳(40代)だからこそ感じる、わかる話だと思う。そういやエリン・イアルと近しい歳になるんだもんね。ウチに子供はいないけど、周りの同年代は子持ちも多く、また会社組織の中間ポジションにいると後進を育てるという思いが、読んでいるとところどころに感じるのですよ。
まあ、小説で「たられば」を思っても詮無きことですが、もし残された人々(カレンタ・ロゥ)がカザルムに早く着いてエリンと会っていたら、王獣は飛ばなかったかもしれないが、ラーザの闘蛇を止める手段はどうしたのか、とか思ったり。
今なら情報開示、形式知と誰もが言うけど、ちょっと前まではそんな雰囲気もなかっただろうに。そんな中、先人が秘匿を良しとした事柄を、独自の観察眼で詳らかにし、後に続く世代に引き継ごうとしたストーリーは惹きこまれた。
ジョウン先生とユーヤンが最後まで心の支えになっていたというのが良くて。ちょいちょい挟む思い出がエリンの人柄、らしさを醸しているのかな。茹でガニ脱皮事件が良いスパイスになっている。
そしてユーヤンの「エリンちゃんなぁ、あんた、頭が八つ、手が八本あるわけじゃないんやでぇ。頭も身体もひとつっきりしか持っとらんのやから、できんことがあって、あたりまえやぁ」の言葉、いろんなことに絡め取られているじぶんにも突き刺さるなあ。
「すべては留めようもなく過ぎ去って行く」まさに流れを描いた作品だった。
- 感想投稿日 : 2016年8月29日
- 読了日 : 2016年8月14日
- 本棚登録日 : 2016年8月29日
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