ヴィクトリア (岩波文庫)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003274415

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  • 城主の娘から城下の彼へ
    秘めた愛の変遷と告白

    気品ある個性と牧歌的な佇まい
    山紫水明の描写が物語を雄弁にした

    求めては突き離す
    感情の縺れとすれ違い
    後悔は微塵もなく
    天命を知り、駆け抜けた

    作者は真善美の調和を
    希求したかったのではないか

  • 「もっとも美しい愛の物語」という惹句とは裏腹に、前半は、スクールカースト下位の空想過多のオタク少年がその後絵師として少し有名になったあたりで元憧れのクラスメートに再会したら「好き」と言われて舞い上がってストーカーして、怖いと言われ逆上するみたいな展開が続く。登場人物の数が増える後半は、こじらせオタクの妄想垂れ流しtwitterみたいな前半より大分マシになるが、今度は女主人公がツンデレの限りを尽くす。かような厨二的筋書きの合間に、主人公の空想(少年時代はスルタン的ハーレム幻想とか騎士幻想とか、後年は私小説的創作内容)が突然脈絡なく、臆面なく開陳されたり、思わせぶりな寓話が挿入されたりする構成はそれなりに面白い。とはいえ、それらの面白さは、ある種の鈍感さによってのみ作品に成形されうるざっくりした筆致に依存していて、その鈍感さはやはり、主人公のこじらせオタクぶりや、女主人公が題名や最後の手紙の文言として、主人公や読者に読まれるものにとどまる作りと密接に関わっている。つまり、全般的にこじらせオタクの主人公と作者、主人公と主人公の妄想の距離の扱いは雑で恣意的に設定されており、結果、遠景は何となくぼやけ、主人公が空想するファンタジックな伝説の世界と自然描写と(当時の)現代の風俗がシームレスに接続するのだが、その雑駁な処理は肯定的に評価すべきものではなく、晩年の作者のナチス・ドイツへの傾倒とも通じる危うさを秘めていると感じられた。

  • 古風で静かな物語。溜め息しか出ない。男ってバカだし、女ってバカだ。そういうものなのだろう。

  • 城の姫と、城下の森に住む粉屋の息子との悲恋。
    筋立ては何も意外なものはなく、文庫の紹介文にある通りの物語が、丹念な言葉の積み重ねによって展開する。ところどころ心象を仮託された自然描写が美しい。

  • ああ~、なんでどうして!とかなりイライラしましたが、当時の社会情勢を考えると領主のお嬢様と粉屋の息子では釣り合いが取れない。
    きっとこの時代に生きた人々は秘めた思いを胸にしまって、好きでもない相手と結婚をしていたのだと思う。
    ヴィクトリアとヨハンネスの心理とノルウェーの自然との描写が溶け合い、とても静謐な物語世界を紡いでいました。

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