緋弾のアリア (11) (MF文庫J)

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  • メディアファクトリー (2011年12月21日発売)
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感想 : 9
4

14巻発売を期に再読中。
10巻から始まった「Gの血族編」がこの11巻で決着する。
この「Gの血族編」なんだけど、どうも「遠山の血族が登場する。でも血縁関係は謎のまま」という前提に無理がありすぎて、読んでいていまいちすっきりしないエピソードになってると思う。
読者の方はとっくにサードやフォースが遠山の遺伝子を使って作られた人工天才であることはわかっている。
登場人物たちも、フォース(かなめ)をキンジの妹として扱う。
だというのに、「血縁関係」というところに触れない。いろいろなところで、いちいち無理を感じてしまう。
白雪とかなめがお互いを姉妹と呼び合うのも突然すぎるし、かなめがキンイチやサードをまったく兄として意識しないのも一切理由が説明されない。
総じて、作者の都合でキャラが無理やり型にはめられている感が出てしまっている。
なんというか、設定あり気で無理やり登場人物たちが役割を演じさせられているような、不自然さをバリバリ感じてノレなかった。
また、この巻はガチバトルが多く、萌え系イベントが他の巻と比べても少ない印象だった。
せっかくの体育祭でもキンジは見学してるだけでまったく活躍しないし、見どころは女子の水着挿絵だけという寂しさ。
後半のジーサード戦なんて、ヒロインが一切登場せず、キンジとサードの男だけの戦いで華がまったくない。
それはそれで、逆に特異なこの巻だけの特長でもあるとは思うんだが・・。
空を飛ぶ飛行機の上という舞台設定は熱いし、キンジの超人的な戦闘能力も、ついにここまで来たかというレベルに達している。
ヒロイン不在の舞台で主人公の少年が戦うという思い切りの良さは評価したい。萌えは薄くとも、燃えは熱いぞと。
ただね・・・。ベルセとかレガルメンテとか言っているうちはまだ良かったんだけど、能力75倍だ、いやいや100倍だからこっちの方が上だとか、数字で語りだすとやっぱり萎えるね。界王拳かよ!ってやつだ。
かなめにしても、サードにしても、死亡を思わせるシーンがとってつけたような感じだし。
まあこの巻だけで、かなめ死亡!実は生きてました!
サード死亡!実は生きてました!
キンジ死亡!実は生きてました!
てな感じだから、いちいち盛り上げてられなかったってのはわかるんだけどさ。
やっぱり、キンジが死んだと思って嘆き悲しむヒロイン達の様子は見たかった。あっさりしすぎて色々もったいない。
ということで、うーん・・・バトルは熱いし、キンジがどこまでも最強主人公してるし、ガリアンでの戦闘は好きな面もあるんだけど・・・やっぱりこの巻は、総合して評価がちょっと低めになるのかなぁ、なんて思った。
この巻だけに色々盛りすぎちゃった感があるのかな。
詰め込みすぎて、整合性が取れなくなってるし、勢いも死んでるし、盛り上がるべきシーンもぽろっと零れ落ちてしまった印象。

それはそれとして。
キンジと戦う前に、サードが「過去色々あって、女はどうもダメでな」とこぼすんだが、これは想像してみると結構イタイ。
ヒステリアモードの発生トリガーは、性的興奮だ。
軍の研究所で生体兵器として戦闘能力を開発されていたサードは、幼いころからヒステリアモードについても色々「実験」されていたんだろう。
サードは、12歳の頃にはオリンピックの記録を複数塗り替えていた、とされている。
つまり、それよりも若い頃から、軍の研究所で、能力開発のために、性的な刺激を・・・与えられていた、のではないか、おそらく。
それで、性的に倒錯し、女性では興奮できない、美術性嗜好に目覚めてしまった、のかもしれない、なんて想像してしまった。
ただ、それが真実なら、当然同じ環境におかれていたフォースことかなめも、能力開発、軍の実験として性的興奮を与えられていたはずなんだよね・・。
そのわりには、サードの性格からはそうした痕跡が見られない。
そのへん、もう少し妄想が膨らむような展開が用意されていたら、また少しは感想が変わったのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2013年5月17日
読了日 : 2013年5月17日
本棚登録日 : 2013年5月17日

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