科学が隆盛を極めるこの時代においても、世の中には「怪異」と呼ばれるものがまだひっそりと存在していた。
それは、異形のものたちで、未だ科学では説明できないような存在のものたちであった。
当然、それを退治するものたちもいる。
「修験者」、「法力僧」……呼ばれ方は様々だったが、そのものたちは、修行と己が持って生まれてきた才能とで怪異と相対する。
ところがその中に、ひと際変わった存在の男がいた。
彼の名前は九条湊。
どこか斜に構えたクセのある青年だが、彼が「異端」とされるのはそこではない。
彼は、怪異を相手にするための、霊力、法力、神通力……その他いろいろな力を一切持っていないのだ。
それにも関わらず、彼は修験者や法力僧が倒せない怪異を倒してしまうという。
果たしてその手腕は、恐るべきものだった……。
最初に読み始めた時は、果たしてどんな展開が待ち受けているのか、一切想像がつきませんでした。
一般的には小説の常識としても、魔法には魔法で立ち向かうものだし、幽霊と呼ばれるものは霊力だとかいろいろな名前で呼ばれるもので立ち向かうものなんですよね。
でもこの話は違う。
読み終わっても、未だによくわかってないんですけど、湊は心理学? 行動分析学? うーん……簡単に言うと「洞察力」という言葉が一番しっくりくるのかしら? それと、物理的な攻撃で持って怪異を倒してしまう。
うん。湊が使うのは科学ですらなくて、本当にもっと単純で純粋なもの。物理。
まあ確かに、この小説の「怪異」だと不可能ではないんですよね。
でもその怪異に対してどういう物理的な攻撃が有効なのかっていうのは多分、「力」がある人は「力」があるが故に考え付かないことなんだろうなあ……と思いました。
なかなかに、小説の「常識」というものを逆手にとった小説で面白かったです。
また港のキャラクターも憎めない感じに設定されているので、その意味でも呼んでて面白かったです。
こういう基本をがっちり抑えてて、その上でお遊び的要素をしっかり乗せてある小説は読んでて読み応えがありますね。
- 感想投稿日 : 2015年8月22日
- 読了日 : 2015年7月22日
- 本棚登録日 : 2015年8月22日
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