スペアの恋 (幻冬舎ルチル文庫 し 1-8)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス (2010年12月1日発売)
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感想 : 24
4

 在宅勤務のSE・槙原俊は、飲まず食わず寝ずで行った仕事明け、玄関を出るなりその場で倒れてしまう。
 気がつくと、アパートの隣人・渡辺研一とその息子・孝太の家で介抱されていた。

 俊は、研一に感謝するが、研一の態度は冷たく、その印象は最悪だった。
 しかしなぜか孝太は俊に懐いてしまう。

 俊が倒れたのはどうやら、風邪だったようで、それから三日間寝付いてしまった俊の下へ、孝太は毎日「お見舞い」と称して、自分のおやつだと思われるお菓子を持ってくる。

 やがて、すっかり風邪もよくなった俊だったが、相変わらず孝太は俊に懐いたまま。
 公園やアパートの庭などで俊を見かけるたびに、駆け寄って纏わりついてくる。
 最初はそれを鬱陶しく思っていた俊だったが、次第にそんな孝太を憎からず思うようになる。

 そんなある日、公園で孝太の叫び声を聞いた俊が駆けつけてみると、そこでは俊の「母親」と名乗る人物が孝太を連れ去ろうとしていた。
 咄嗟に孝太を守ろうとした俊だったが、そのことから怪我をしてしまう。
 そして、それがきっかけで研一と孝太の過去を知ることになってしまう。
 それは、研一の元妻が、浮気の際に、孝太を車に置き去りにして孝太が死にかけたという大変なもので、そのことにより孝太は、知らない人間のことを基本的には受け入れられなくなってしまっているのだという。
 おまけに、そのタイミングで、孝太が一番懐いているベビーシッターが、長期に療養することになってしまい、その際にしばらく孝太を預かってほしいと頼まれる。
 最初はためらった俊だったが、状況を聞き、研一の気持ちが変わらないのだと知ると、孝太を預かることにする。

 すると、必然的に研一との仲も縮まっていって……

 という話でした。
 実は、俊にはこれ以外にも、頻繁に住居を変えないといけない理由が他にあって。
 それは、昔付き合って、今も別れてくれない恋人の束縛ってやつで。
 俊は何度か別れようとして、その度に転居もするのだけれど、結局別れきれなくて元鞘というのを繰り返していて、でも今度という今度は。
 その恋人が、別の女と結婚するけど、これからも関係を継続しようと言ってくるから、本気で別れようとしていて。
 でも、元恋人の罠は巧妙で、また元通りになるのかなー……となりそうだったところ、研一の存在に何とか思いとどまらされるという感じで……。

 それでようやく本当の自分の気持ちに気がついた俊は、けれど、自分の気持ちが絶望的なものであることを、これまでの経験で勝手に決め付けていて。
 また、ほどよいところで、研一の前から姿を消してしまう……。

 まぁ、最後は当然ハッピーエンドですけど。
 なんというか、意外と重たいものを二人ともが背負っていて。
 また、子どもを間に挟んだやり取りがかわいくて、かわいくて。
 素敵な話だと思いました。

 前もこの作者さんの話素敵だと思った記憶があるので、この作者さんはきっと素敵な話を書く人なんでしょうね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(BL)
感想投稿日 : 2012年7月18日
読了日 : 2012年7月18日
本棚登録日 : 2012年7月18日

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