タイトルとカバーイラストがいまいち好みじゃなったけど、作家読みしました。うん、結構好きだった。前にどなたかのレビューでこの作家さんの文体が好き過ぎて盲目っていうのを読んだけど、すごくわかります。話の筋がどうこう以前に、わたしもこの作家さんの文章が醸し出す空気感が大好きです。今回もしっとりと美しい世界観だった。とにかくこの人のセリフまわしがリアルで好き。受のクールでツンとしたしゃべり方が特に好き。本当は色んなことを我慢して感情を殺した上で成り立っているクールなんだけども。受が藍を栽培する農家の子のなので、『藍』がキーワードです。作中のところどころに散りばめられた色、色、色。青だけでもそんなにたくさんあるんだな~と感心する。
物語はわたしの大好きな同級生ものです。ノンケで彼女持ちの攻視点。攻の子もいかにも恵まれた家庭環境で育ちましたっていう健やかないい子で、ちゃんと彼女のことも好きで大切にしてたんだけど、同級生で親友の受に告白されて以来、彼を初めてそういう目で意識し始めどんどん気持ちが持って行かれてしまう。もちろん最初は同性なんて受け入れられないと悩むのだけど。ゲイではないのに、親友の遥に心を傾けていったのは、思えば、どこが分岐点だったのかな。夜の観覧車の中で『好きだ』と魔がさしたように告白されてしまったところかしら。作中なんども、『ごめん』という言葉が出てくる。それをお互いに何度も言いあっているのだけど。(好きになって)ごめん。(気持ちに応えられなくて)ごめん。その都度いろんな気持ちがその三文字に集約されていて、とても印象に残った。
- 感想投稿日 : 2012年5月30日
- 読了日 : 2012年5月30日
- 本棚登録日 : 2012年5月30日
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