スワン夫妻とジルベルトの物語はどうやら終焉を迎えたようだ。この巻にはノルポワ氏や作家のベルゴットとの接点を通じて、プルースト自身の芸術観が垣間見える。すなわち「天才的な作品がただちに人びとに賞讃されること」の難しさと、それにもかかわらず「作品自体が、天才を理解することのできる精神の芽を作り」、かくして五十年の歳月をかけてベートーヴェンの四重奏曲の聴衆を増やしたと言うのだ。そういえば、このことを知っていたスタンダールも、自らの小説の評価を五十年後に託したのだった。プルーストの評価には五十年は必要なかったが。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
☆フランス文学
- 感想投稿日 : 2013年12月4日
- 読了日 : 2013年12月4日
- 本棚登録日 : 2013年12月4日
みんなの感想をみる