難解な小説である。連想のままに連綿と切れ目なく語られる文体は、この作品に限ったことではなく、いわば金井美恵子の特質であるから、難解さや感情移入の困難さはそのせいではない。ここには表層だけが提示されており、そこにまた新たな表層が半ばは覆いかぶさるように重ねられていく。そして、全体を支える構造がきわめて見えにくいのだ。その上に、自転車に乗る娘のように、繰り返し現れるイメージもあり、時間感覚もまた解体されるのだ。読者は、ジャン・ルノワールを背後にもつ、金井美恵子の思惟と世界に幻惑されるしか術がないかのごとくだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
☆日本文学
- 感想投稿日 : 2014年1月16日
- 読了日 : 2014年1月15日
- 本棚登録日 : 2014年1月16日
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