月の輪草子

著者 :
  • 講談社 (2012年10月31日発売)
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本棚登録 : 140
感想 : 28
4

「春はあけぼの」の一節が好きだ。
高校の授業で習った時はさしたる思いもなかった。
だが何度も何度も繰り返し読んだその文は、徐々に私の中で変化していく。
四季折々の美しさを端的に情緒豊かに表現している文章の最高傑作と言ってもいい。
時を経ても色あせないみずみずしさ。
文章の始まりの体言止めがより一層効果的になっているのだと思う。

この作品は、史実には当然基づいているだろうが寂聴さんのフィクションも存分に混じっているようだ。
清少納言があえて描かなかった中宮定子の悲遇の晩年が事細かに描かれていて切ない。
清少納言と定子のきらきらした一面を切り取ったものが枕草子だとしたら、この月の輪草子は裏草子といったところか。

彼女たちを取り巻いたつらい日々を知ってから、山吹の花のエピソードを思い返すとなおさらじーんと来る。
「山吹の花」の一節は一番二人の関係性を象徴しているようで、大好きな場面だ。

この本を読んでなにやら昔の勉強したころの記憶が色々よみがえってきた。
清少納言だけでなく、和泉式部、藤原道綱の母、そしてもちろん紫式部。オールスターが登場して豪華絢爛。
古文を読める知識は高校時代がピークで今はとてもとても無理だ。
でも現代語訳でもいいから無性に読んでみたくなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年5月20日
読了日 : 2013年5月19日
本棚登録日 : 2013年5月20日

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