第60回江戸川乱歩賞受賞作品。
選考委員の絶賛を浴びたと言うこともあり大いに期待して読む。
うーむ、正直いってそんなに絶賛するほどの作品なのだろうか。
いやね、面白く読めましたよ。
特に後半なんて明日に障ると思いつつ寝る間を惜しんで読んじゃったもの。
40代で失明した盲目の男性が主人公。
戦後、満州から引き揚げてきたのだがその際に兄と生き別れになっている。
その兄が残留孤児として帰国し20年以上もの月日がたっていた。
ところがあることをきっかけにその兄が本物の兄かどうか不審に思うようになった。
真実を知るために動き出した彼には様々な困難が待ち受け時には自分の命さえ危機にさらされてしまう。
果たして兄は、あの兄なのか・・・。
全盲の人がどんな生活をしているのかこの本を読むと良く分かる。
描写がリアルで(果たして本当にリアルか分からないが)、読んでいる私まで暗闇に包まれたような重苦しい閉塞感が襲ってくる。
さらに中国残留孤児の現状がこんなに厳しいものとは思いもしなかった。
テレビで残留孤児たちの肉親捜しが行われていたのは遠い昔の記憶でしかなかったが、今なお当事者たちは様々は問題を抱えているのだ。
それにしても政府の対応もひどい。
こういった社会的背景の描写は緻密な取材に基づいているのだろう。
ただ、肝心の人物描写がいかんせん浅い。
この辺りが良くなったら物語に深みが出るのにと思うと非常に惜しい。
最後の大団円のオチもちょっとね。
さほどミステリーを読まない私がこんなこと言うのもなんですが。
でもデビュー作でこれだけ読ませるのは手放しですごい。
今後に期待したいと思います。
- 感想投稿日 : 2014年10月7日
- 読了日 : 2014年10月6日
- 本棚登録日 : 2014年10月7日
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