本書は認知症を患っている昇平と介護をする妻の曜子、そして3人の娘たちの10年間を描いた連作短編集。中島京子さんらしいユーモアと優しさにあふれたあったかい介護小説だった。介護と言うと途端に暗くなりがちで読んでいるだけで疲労感が押し寄せてくるものもあるけれど、この小説はあくまでも明るい。
現実はこんなもんじゃないと心の中で思う一方で、羨ましいと思うのも正直な気持ち。折れることなく夫をまっすぐに思い続ける妻の覚悟もあっぱれだし、なんだかんだと言いつつも3人も娘がいることで気持ちに余裕が出てくるのだと思う。
これが父ではなく母が認知症になってしまったら、3人の娘ではなく3人の息子だたらそうはいかないだろう・・・、なんて意地悪な思いを抱きつつ読むのもまた楽しかった。
特筆すべきは一つ一つのエピソードの描き方の巧さ。冒頭の遊園地の場面、同級生のお葬式に参列した時のこと、入れ歯をめぐる冒険、妻の入院などなど・・・。どれもこれもどこかしらほっこりとさせて、深刻なテーマを深刻にさせない作者のさじ加減の妙が素晴らしい。
さすが中島京子さん。
まだほんの数冊しか作者の作品は読んでいないけれど、もっともっと読みたくなった。
とりあえず、「かたづの!」かなぁ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2015年8月31日
- 読了日 : 2015年8月30日
- 本棚登録日 : 2015年8月31日
みんなの感想をみる
コメント 2件
だいさんのコメント
2015/09/04
vilureefさんのコメント
2015/09/04