少し前に読んだ「閉経記」と同じひろみさんが書いたとは思えない印象。
赤裸々な性の話もなければズンバも出て来ない。
そこには濃密な父のと最後の日々がただ淡々と記されている。
読者へのサービス精神も捨て去ったありのままのひろみさんの姿はかえって切ない。
海を越えて日米を行き来する尋常ではない介護の日々。
熊本にはただひたすら娘が帰ることを待っている父がいて、カリフォルニアには自分の家族がいる。
誰にも代わりになる人はいなくてさぞしんどかっただろうなあ。
すごいよ、ひろみさん。本当によくやったよ。
と、誰しも思うに違いない。
でも、本人は悔やんでるんだよね。あんなに頑張ったのに。
私の夫は10代の頃に母親を亡くしている。長い長い闘病生活を在宅介護で支え続けた。
中学生の頃は学校から帰宅すると母にお水を持って行くのが日課になっていた。
だが、ある日それをサボった。一刻でも早く友達と遊びたいがために。
夫は私に言った。
どうしてたった数分の事ができなかったんだろうと。
母のおむつ交換もお風呂の介助も厭わずやってきた人が悔やむのである。
傍から見れば十分すぎるほど介護を頑張ったのに悔やむ人は多いのだろう。
もちろん、やり尽くしたと言える人だってすごい。
果たして私はどうなるのか。次は私の番だ。
ちょっと心配だけどやるしかないんだなぁ。
それにしても、ひろみさんと父上の親子関係は羨ましい限りだ。
こんなに父親から愛されることってあるんだなあ。想像もできない世界。
だから頑張れたのかなとも思ったり。
老人とは思えないほどの機知に富んだ会話を読むと、ひろみさんの文章力は父親譲りなんだろうか。
最期まで意思疎通を取れたこと、これって本当に幸せだと思う。
なかなか実際はそうもいかない。
入院はしない、救急車も呼ぶなと張り紙をしている父上。
ひろみさんもすごいけれど、この父上もすごい。
あっぱれである。
- 感想投稿日 : 2014年4月14日
- 読了日 : 2014年4月12日
- 本棚登録日 : 2014年4月14日
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