アフリカ難民のサリマと日本人女性のハリネズミ。
自分の生い立ちさえ振り返ることもなく流れ流れてきたサリマと、高学歴でありながらも異国で本来の自分を見失いつつあるハリネズミ。
そんな二人の女性がオーストラリアで出会い、支えあい、そしてお互いが新しい一歩を踏み出していく物語。
単なる友情の話ではない。
小説の大きなテーマは言語だ。
異国の地での言葉の壁はいかに高いことか。
言葉を自由に話せないというだけで、人間の尊厳にまでかかわってくる。
第二言語の習得が異邦人に徐々に徐々に自由を与えていくことになる。
と、同時に母語への深い愛情がにじみ出ているのも確かだ。
私たちは日ごろ母語をいかに粗末に扱っているんだろう。
じっと考える。
私には友人とまでは言えない外国人の知人がいる。
今、彼女は大きなトラブルを抱えているようだ。
彼女の日本語が拙いことを言い訳に、今まで親密度を今一歩踏み込めないでいた。
要するに、面倒だったからだ。根気よく彼女の言葉を聞くのが。
今、私は考える。言葉を超えて自分には何ができるだろう。
異国の地で子供を抱え歯を食いしばっている彼女の助けになれるだろうか。
この本を読んだせいか、いつも以上に感傷的になってしまった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年12月15日
- 読了日 : 2013年12月14日
- 本棚登録日 : 2013年12月14日
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