ドクター苫米地の新・福音書――禁断の自己改造プログラム

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  • 講談社 (2007年7月24日発売)
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脳機能学者、計算言語学者、分析哲学者、脱洗脳のプロとしてオウム真理教事件の信者の脱洗脳や、国松長官狙撃事件の実行犯の詳細な記憶の回復などを手がけた、苫米地英人の新刊読了。



1、メタ思考により抽象度を上げるトレーニング
2、呼吸法
3、モーダルチャンネルを利用して身体的に記憶にアクセスする瞑想法

これって魔法修行そのままじゃね???w

最終的にはあらゆるシステムを相対化してその系の外に出ること。それにより真の自由意志を獲得することと説く。

クロウリーみたいですね。


世界は物理的宇宙と情報空間宇宙に大別できるが、物理的宇宙も情報空間宇宙のエントロピーが増大しただけの存在であり、この世界自体が情報空間宇宙そのものであると説明、となれば世界自体が個人の唯識によってしか存在し得ないこと、そして情報空間であれば書き換え可能であることを説明する。個人の認識レベルを抽象度を高く上げ、メタレベルが高くなればなるほど、書き換え可能性も上がってくるという考え。この先に仏教的な悟り=「空」の境地=あらゆる実現可能性世界があると説明、これが我々を取り巻く現在の物理→情報空間世界の一応の限界=神のレベルの認知ということ。

さらに重要な問題1
時間論。

時間は過去・現在・未来と流れるのではなく
未来→現在→過去、と流れるという考え方。過去は現在の結果でしかなく、エントロピーの増大した状態にしかすぎず、常に現在を書き換えることでしか過去も生まれ得ない。現在が肯定されれば過去も全て肯定され、現在が否定されれば過去も否定される、すなわち時間さえ現在の観測者の主観的な認識に依存しているにしすぎない。現在に働きかけることで現実の未来さえも書き換え可能になる。またそこに心理療法の新しいパラダイムの可能性がある。

この辺りと縁起の話、シンクロにシティー系の話はどこか曖昧な印象をもったがどうか。また物体が抽象度の高い状態から物質的なエントロピー増大の状態に流れるという考え方はカバラのケテルからマクルトへの流出という概念と全く同一といえるのではないか。


重要な問題2
神は全知全能か

神が作り上げた世界が我々を取り巻く世界だとすると、これは一つの系、システム/内部表現の世界だと言える。ゲーデルの不確定性原理「自然数論程度に大きな演演繹系においては、内部論理矛盾性を成り立たせることはできない。系の中に必ず、正しくない命題、もしくは証明不可能な命題が内包されてしまう」によって内部矛盾性のない完全な系というものは存在しないと証明されてしまった。この世界の神は完全/全知全能ではいという証明なのではないか。
そしてその上で系の中の部分存在であるゲーデルが系全体を内包する原理にたどりつけたのは何故か。それが理性を超えた直感の世界でありメタ思考の世界であると説明する。内部の中の極限の内部、ミクロコスモスにマクロコスモスを超克できる可能性を感じることでもある。

神が矛盾を含んだ不完全な存在であると言う考え方は、神秘主義、グノーシス派に特徴的な考えかたなのではないか。
またゲーデルの直感自体が証明不可能な命題に属することだと大雑把に邪推してしまうが、その辺りも少し弱いように感じたがどうか。

チラ裏的感想文で申し訳ないが、全般的には全く問題ないように思える。ディベートとしては完璧。かつ魅惑的。何がいいたかったといえば、彼自身は自らを仏教徒と称するがそれは「空」と「縁起」の認識を重要なツールとしているからで、むしろこの極端なまでの天動説的発想と唯識的世界観、カバラ的世界観は、ドクター苫米地ワークスが現代の魔術復興運動に他ならない。と勝手に認定。
壮大な彼の洗脳に軽い目眩を覚えつつ、自分の智慧のネタ元を全く明かさない狡智さに乾杯。


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感想投稿日 : 2007年8月15日
本棚登録日 : 2007年8月15日

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